鎌と撥

貸本の荷を降ろし、清吉は長屋には戻らず、まっすぐ根津の権現様へ向かった。縁日に太鼓を鳴らす、その稽古だ。一緒に住むお栄は、清吉が太鼓を叩くことを、随分と自慢にしているようだった。

お栄は、清吉より15ほど年が上である。口入れ屋で通いの下女をしながら、番頭がいない時には代わりを勤められるほどの遣り手だと、隣の蕎麦屋の旦那が少し面白くなさそうに話していたのを聞いたことがある。実際、清吉も口ではお栄に敵わない。それどころか全てについて頭が上がらない。年上のお栄は清吉の男を立ててくれてはいるが、それがなぜかカンに触ることがある。そんなときは、年甲斐もなく媚びたようなお栄の声が、やけに耳についた。

お栄と出会ったのは、8年前の房州だ。当時18だった清吉は、悪い仲間に誘われるまま、賭場で手慰みを覚えるようになった。

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